一般に、借地契約では、借地上の建物を地主に無断で増改築してはいけないという条項、いわゆる増改築禁止特約が入っています。

以下、増改築禁止特約について、解説します。

1 増改築とは

建築:建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう。(建築基準法2条13号)

増築:既存建物の床面積を増加させること。

改築:建築物の全部若しくは一部を除却し又はこれらの部分が災害等によつて滅失した後、引き続いてこれと用途、規模、構造の著しく異ならないものを建てることをいう。材料の新旧は必ずしも問わない。(横浜地判昭和41年7月28日)

大規模の修繕:建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。(建築基準法2条14号)

主要構造部:壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、附け柱、揚げ床、最下階の床、廻り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。(建築基準法2条5号)

この定義からすれば、既存の建物を取り壊して、全く同じ建物を建築することは改築になります。モルタルの壁をはがして、サイディングボードを張ることも、改築になるでしょう。一方、モルタル上のペンキを塗る行為は改築にはあたりません。

2 増改築禁止特約の有効性

本来、借地権者がその所有にかかる借地上建物を増改築することは自由であるため、増改築禁止特約が有効が否かは従前争いがありましたが、昭和41年に旧借地法8条ノ2第2項が制定されたため、増改築禁止特約が有効であることは立法的に解決されました。

3 修繕を禁止する特約の無効性

一方、建物の機能・美観を維持保存するために必要な合理的範囲内の修繕を禁止する特約は旧借地法11条(借地借家法9条)により無効です。(東京地判昭和47年5月31日)

4 増改築許可の裁判

増改築禁止特約がある場合、土地賃借人が増改築の許可を地主に申し入れたが、地主が許可しない場合、土地賃借人は増改築許可の裁判により、地主の承諾に代わる裁判所に許可を得ることができます。この場合、一般に建物賃借人は許可の対価として、承諾料の支払いを命じられます。 

5 増改築禁止特約がない場合に大規模修繕で建物の寿命が伸びた場合

では、増改築禁止特約がない場合、土地賃借人は建物の大規模修繕を重ねることにより、半永久的に土地を賃借し続けることが可能なのでしょうか。そのようなことはありません。大規模の修繕により借地上の建物の寿命が延長された場合は、修繕前後に借地権設定者が異議を述べた場合は、修繕前の状況、修繕の実態、修繕当時の老朽の度合により、修繕前の建物が朽廃すべかりし時点で消滅します。(最判昭和42年9月21日)。