賃貸人の自己使用を正当事由として、建物賃貸借契約を更新拒絶し、明け渡しを求めることは可能でしょうか。

それは、一概には、可能とも、不可能とも言えません。なぜなら、正当事由は、以下の要素の総合判断だからです。

1 賃貸人の建物の使用を必要とする事情

2 賃借人の建物の使用を必要とする事情

3 建物の賃貸借に関する従前の経過

4 建物の利用状況

5 建物の現況

6 立退料

このうち、1と2が基本要因で、3から6が補完要因です。

正直なところ、立退料なしで正当事由が認められるのは、相当1が2より大きいケースに限られます。

では、立退料を前提に、賃貸人の自己使用により正当事由が認められた事案はどのようなものがあるでしょうか。

【東京地裁H17.10.11】

  立退料350万円

  賃料  29万5000円

  賃貸人 医師夫妻

  賃借人 夫、妻、子

  事情  賃貸人は、仕事の都合で栃木に居住していたが、契約終了時には戻って診療所として利用する予定であった。

【東京地裁H19.8.29】

  立退料 205万円

  賃料  10万5000円

  賃貸人 夫、妻、母

  賃借人 本人(母)、娘

  事情  研究者である賃貸人の娘が米国から帰国、娘の子の面倒をみるため、賃貸人と娘親子が同居する必要あり。そのため、本件建物を建替える。

【東京地裁H21.7.30】

  立退料 185万円

  賃料  8万3000円

  賃貸人 夫、妻、子

  賃借人 夫、妻、子

  事情  妻が精神異常で、離婚の話が出ている。本件アパートを建替えて、離婚後の妻と子供の生活費を捻出させたい

【東京地裁H23.3.13】

  立退料 45万円

  賃料  15万円

  賃貸人 独身女性

  賃借人 夫、妻、子

  事情  賃貸人は米国勤務であるが、帰国予定。賃借人は、その事情を知っていた。