例えば、親から経営する会社の株式の贈与を受けたが、その会社を第三者へ処分(M&A)後、親が亡くなり相続が発生したところ、兄弟から遺留分減殺請求を受けた場合の贈与財産の評価はどう考えるか?

遺贈を受けた財産を第三者に売却等処分した後、遺留分減殺請求を受けた事案について、最高裁は「右の弁償すべき額の算定においては、遺留分権利者が減殺請求権の行使により当該遺贈の目的につき取得すべきであった権利の処分額が客観的に相当と認められるものであった場合には、その額を基準とすべきものと解するのが相当である。」(最判平成10年3月10日)と判示し、処分額を基準とする旨判示している。しかし、これは相続開始後処分した事案であり、相続開始前に贈与財産を処分した場合の遺留分算定における評価額は明らかではない(上記最判の調査官解説でも生前贈与財産が相続開始前に譲渡された場合に関し、どのように考えるかは将来の課題であるとされている)。

したがって、実務上、譲渡額を基準とすると言い切ることはできないが、内田貴元東大教授は、「譲渡時の(客観的に相当な)価額についていわば金銭の贈与とみなし、相続開始時の貨幣価値に換算して評価すべきではないだろうか」(東大出版会 内田貴著 民法Ⅳ 補訂版 516頁)と述べている。

贈与を受けた者に、理由のない損も(目的物の価格が上がった場合)得も(目的物の価格が下がった場合)もさせないためには、私も内田貴先生の考え方は合理的であり、実務上も参考になる。