会社経営者やアパート経営者が亡くなられた場合、銀行等からの借入金は法的には法定相続分にしたがって分割されて相続されます。たとえば、法定相続人が奥様と長男、次男の3名で、銀行から事業資金を1億円借入されている方が亡くなられた場合、奥様が5000万円、長男と次男が各2500万円、借入金を相続することになります(もちろん、相続放棄をすれば別です)。

では、事業を長男に承継させたいと考えた経営者が遺言で自社株や賃貸マンションを長男に相続させる代わりに、銀行借入も長男に相続させるとの遺言を残したらどうでしょうか。その場合、遺言書の「銀行借入を長男に相続させる」との部分は、相続人間(奥様、長男、次男の間)では有効ですが、銀行に対しては直接効力はありません。長男が放蕩息子であった場合、銀行としては遺言一本で融資全額について債務者が放蕩息子になってしまうと困りますから。

一方で銀行としても、事業を引き継いだ相続人に対して、法定相続分しか請求できないのも困ります。そこで、賃貸マンションの建築資金を融資する場合は借主が亡くなったあと、賃貸事業を承継する予定である人を保証人とするケースが多いと思われます。

いずれにしても、借り入れる際、遺言書を作る際、相続後遺産分割協議をする際、経営をどのように承継するか、そして借入金をどうするか、銀行と膝を突き合わせて協議することが重要です。

遺産分割協議段階であれば、事業を承継する人が借入金も承継することを相続人間で合意したうえで、事業を承継した人が全額借入金を引き受けるように契約を変更するように銀行と交渉する必要があります。