相隣関係(隣接地トラブル)
不動産のトラブルには、隣り合った土地の所有者同士での争いとなるものがあります。
具体的には、隣地境界線をめぐるトラブルです。
隣地境界線とは、ある土地とその隣の土地の境を示す線のことであり、これが明確となっていないことが原因でトラブルに発展してしまうことがあります。
本ホームページでは、隣地境界線の基本的なルールや確認方法、トラブルの解決方法について解説をしていきます。
◆隣地境界線の基本的なルール
建物を建築する場合には、境界線から50センチ以上の距離を保たなければならないというルールが民法234条1項により定められています。
もしこれを破って建築をしようとするものがいる場合には、隣接地の所有者はその建築を中止させたり、距離を離すように変更を求めることができます。
ただし、上記のルールが破られて建築がされたことに気がつかないといったこともあります。
そのような場合のルールも、同条2項に定められており、建築開始から1年が経過した場合には、建物完成後は損害賠償請求をすることができる、とされています。
・慣習がある場合
もっとも、東京都のような都市部であれば、それぞれの敷地面積の狭さから、50センチのルールを守っていると、十分な建築をすることができないという場合があります。
そのような土地には、50センチ未満に建築をしても良いという、「慣習」が存在する場合があります。
慣習がある場合には、その慣習に従って50センチ離す必要がないという柔軟なルールも設けられています(民法236条)。
ただし、これはあくまで慣習であるため、具体的にどれくらいであるかというルールが曖昧であることが多く、解釈の違いによってトラブルに発展する可能性も否定はできません。
そのため、慣習のある地域では、事前に隣接地の所有者と話し合いをし、意見を聞いておくべきといえます。
どうしても意見が噛み合わない場合には、建物の建築をする前に、弁護士に相談することをおすすめします。
・耐火構造のある建物の例外
また、耐火構造等の条件を満たした建築物である場合には、外壁を境界に接して設けることができるとしています。
これは建築基準法63条に定められている特別ルールとなっています。
・建物の構造に関するルール
さらに建築物の構造にもルールが定められており、民法235条によると、窓や縁側はプライバシー保護のために境界から1メートル以上離すか、目隠しをつける義務があります。
目隠しをつける義務が発生するのは、隣接地を見通せるような場合のみとなっています。
・塀やフェンスに関するルール
隣接地との間に空き地がある場合には、所有者はそれぞれ、他の所有者と話し合いをした上で、費用を分担し、境界に塀、フェンス、ブロック塀を設けることができます。
自分の敷地内に塀を設置することは自由ですが、あまりにも高い塀を設置し、日照権を侵害してしまったような場合には、トラブルに発展してしまいます。
◆隣地境界線の確認方法
隣地境界線の確認方法は主に3種類あります。
①地積測量図を見る
地積測量図は法務局で取得することができます。
地積測量図は、土地の面積や形状、隣接する土地との境界や位置関係などが記載された公的な図面です。
しかしこの図面は何十年も前に作成されたものが多く、測量の精度が低い場合や、境界標の位置が示されていない場合があるため注意が必要です。
地積測量図によって確認ができない場合には、次の方法を試すこととなります。
②境界標の確認
全ての敷地の角には境界標が揃っていることが重要であり、揃っていない場合には、新たに設置をする必要があります。
現地の境界標と地積測量図、登記簿謄本の記載の3つが全て一致していることによって境界は特定されます。
しかし、これらが一致していない場合にはさらに次の方法を試すこととなります。
③専門家に測量の依頼
専門家とは具体的に、土地家屋調査士を指します。
しかしながら、専門家に測量をしてもらっても、境界が判明しただけであり、公的にその境界が確定するわけではありません。
そこで、境界トラブルの解決手段にもなり得る制度を次のコラムで解説いたします。
◆筆界特定制度
筆界特定制度は、裁判をせずに、法務局の筆界特定登記官が外部専門家の意見を踏まえた上で、土地の筆界を公的に確定させる制度です。
新たに筆界という専門用語が出てきましたが、筆界とは土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するために定められた線であり、境界とほぼ同じ意味を有しています。
したがって、筆界特定制度を利用することによって境界トラブルの解決にも資するということです。
筆界特定制度を利用するメリットとしては、手間がかからず、また費用が非常に安いという点が挙げられるでしょう。
筆界特定制度の申請手数料は、特定したい筆界を共有する2筆の土地の固定資産税評価額の合計が基準となり、4000万円の評価額の土地であっても、手数料は8000円程度となっています。
また筆界が特定されるまでの期間は、半年から1年程度であり、迅速に解決をすることができるという点も魅力といえるでしょう。
KOWA法律事務所では、中央区、大田区、江東区、品川区を中心に、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県からの相続、不動産、金融、ITシステム、企業法務に関する相談を受け付けております。
隣地の土地との境界線についてお悩みの方は、お気軽にご相談にお越しください。
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弁護士紹介
池田 聡Satoshi Ikeda / 東京弁護士会所属
銀行で支店長として勤務していた経験を活かし、問題解決のために
最適な解決策をご提案いたします。
金融、相続、不動産、ITシステム、企業法務に関するご相談なら、お金と事業を知り尽くした当事務所へお任せください。
- 経歴
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日本興業銀行・みずほ銀行に通算約24年勤務。
営業店9年、IT部門8年、業務企画部門7年。 最後の3年間は支店長を務める。
都内中堅法律事務所を経て、2014年 KOWA法律事務所を開設。
- 著作
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システム開発 受託契約の教科書
著者:池田 聡 -
元銀行支店長弁護士が教える 融資業務の法律知識
著者:池田 聡
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- 執筆
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週刊東洋経済 2017年9月2日号 民法改正で激変①ITサービス
週刊東洋経済 2020年4月4日号 変わる民法&労働法 3売買・請負 5法定利率
週刊東洋経済 2021年3月6日号 働き方と仕事の法律 売買・請負
月刊銀行実務(銀行研修社) 執筆多数
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